カワサキの旧車の中でも、特に名前が似ていることから混同されやすいKZ550とZ550FX。
KZ550とZ550FXの違いについて詳しく知りたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
これらのモデルには、単なる名称の違いだけでなく、その出自や仕様に大きな隔たりがあります。
例えば、Z550FXの国内物と逆輸入モデルではブレーキ仕様が異なり、Z550FXのフレーム番号にはモデルの出自を知るための重要な情報が隠されています。
また、一部で囁かれるZ550FXの不人気という噂の真相や、Z400FXとの比較で語られることの多いZ550FXの速さ、馬力、そして何速ミッションなのかといったスペック面も気になるところです。
さらに、ベースとなったモデルの年式や、KZ550の年式ごとの特徴、Z550FXの生産台数がもたらす希少性、KZ550の中古車市場での現状など、購入を検討する上での比較ポイントは多岐にわたります。
この記事では、Z550FXとKZ550の違いをあらゆる角度から深掘りし、あなたの疑問を解消します。
この記事を読むことで、以下の点について理解が深まります。
- KZ550とZ550FXの基本的な出自とモデルの違い
- フレーム番号やブレーキ仕様など具体的な見分け方
- エンジン性能(馬力・速さ)やスペックの詳細な比較
- 中古市場での評価や「不人気」と言われる理由の考察
KZ550とZ550FXの違いを解説

- KZ550とZ550FXの違いとは?
- Z550FXの国内物と逆輸入モデル
- Z550FXのフレーム番号で見分ける
- KZ550とZ550FXの年式の関係
- Z550FXの希少性を示す生産台数
KZ550とZ550FXの違いとは?

KZ550とZ550FXの最も大きな違いは、それぞれのモデルが主として販売された地域と、それに伴う仕様の差異にあります。
端的に言えば、Z550FXは日本国内市場向けに特化して販売されたモデルの名称であり、一方でKZ550は主に北米市場で販売された際の車名です。
このため、両者は基本的なコンポーネントを共有する兄弟車でありながら、販売地域の法規制や市場のニーズに合わせて細部が異なっています。
例えば、最も分かりやすい違いの一つがブレーキシステムです。
日本国内で正規販売されたZ550FXは、前輪ダブルディスク、後輪シングルディスクのトリプルディスクブレーキが標準装備でした。
しかし、北米仕様であるKZ550の多くは、コストや現地の好みを反映してか、後輪にドラムブレーキを採用しているモデルが一般的です。
このように、車名の違いは単なるネーミングのバリエーションではなく、そのバイクがどの市場を向いて作られたかを示す重要な指標となっています。
したがって、中古車を探す際には、名前だけで判断するのではなく、細かな仕様を確認することが、求める一台を見つけるための鍵となります。
項目 | Z550FX (国内仕様) | KZ550 (主に北米仕様) |
---|---|---|
主な販売地域 | 日本 | 北米、欧州 |
ネーミング | Z400FXの兄貴分としての「FX」 | Zシリーズの輸出名「KZ」 |
フロントブレーキ | ダブルディスク | シングルまたはダブルディスク |
リアブレーキ | シングルディスク | ドラムブレーキが多い |

Z550FXの国内物と逆輸入モデル

Z550FXという名称を持つバイクを語る上で、「国内物」と「逆輸入車」の違いを理解することは非常に大切です。
国内物とは、その名の通り、最初から日本国内での販売を目的としてカワサキが製造し、正規ディーラーを通じて販売された車両を指します。
一方、逆輸入車とは、元々は海外市場(主に北米や欧州)向けに「Z550」や「KZ550」として輸出された車両が、後に中古車として日本に輸入されたものを指します。
これらは、現地の仕様のまま日本で登録されるため、前述の通りブレーキシステムが国内物と異なったり、スピードメーターの表示がマイルであったり、灯火類の仕様が違ったりすることがあります。
国内で「Z550FX」として流通している中古車の中には、これらの逆輸入車にZ550FXのエンブレムなどを装着し、「FX仕様」として販売されているケースも少なくありません。
もちろん、逆輸入車が劣っているというわけではありませんが、オリジナルの国内物Z550FXにこだわりたい場合は、後述するフレーム番号の確認などが不可欠となります。
両者の違いを正確に把握しておくことで、購入時のミスマッチを防ぐことができます。
Z550FXのフレーム番号で見分ける

Z550FXの国内物と逆輸入車を正確に見分ける上で、最も信頼性の高い方法がフレーム番号の確認です。
フレームのステアリングヘッド部分に打刻されたこの番号には、車両の出自を示す情報が含まれています。
一般的に、北米向けに輸出されたカワサキのバイクのフレーム番号は「JKAKZ」といったアルファベットで始まることが多いです。
これはVINコード(車両識別番号)と呼ばれる国際的な車両識別コードの一部であり、製造国やメーカー、車種などを示しています。
対して、日本国内で販売されたZ550FXのフレーム番号は、この「JKAKZ」から始まる形式ではありません。
「KZ550B-XXXXXX」のように、車種を示す型式とそれに続く製造番号で構成されています。
日本で「Z550FX」として販売されたのは「Z550B2」というモデルであるため、フレーム番号が「KZ550B-」で始まっているかどうかは、国内物かどうかを判断する上での決定的な証拠の一つとなります。
中古車を検討する際には、必ずこのフレーム番号を確認させてもらい、車両の出自を確かめることが賢明です。
書類上の車名だけでなく、現車の打刻を確認する一手間が、後々の後悔を防ぎます。
KZ550とZ550FXの年式の関係

KZ550とZ550FXの年式の関係を理解するには、まずベースとなったZ500の存在を知る必要があります。
カワサキは1979年に欧州市場でZ500を発売しました。
これがZ500/550シリーズの原点です。
このZ500をベースに、日本国内の免許制度や市場の要望に合わせてスケールダウンしたモデルが、同じく1979年に登場したZ400FXです。
そして、Z400FXの成功を受け、その兄貴分として排気量を553ccに拡大して日本市場に投入されたのがZ550FXとなります。
日本でZ550FX(Z550B2)が販売されたのは、主に1981年頃です。
一方で、輸出モデルであるKZ550シリーズは、1980年から登場し、その後数年間にわたって様々なバリエーションが展開されました。
初期のKZ550(1980-1981年)はツインショックのリアサスペンションを備えていましたが、1982年以降の高性能版であるGPz550ではモノショックが採用されるなど、年式によって仕様が大きく異なります。
このように考えると、Z550FXはZ500/550シリーズという大きな括りの中の、特定の時期に日本市場向けに特化して作られたモデルと位置づけることができます。
そのため、単に「年式」で比較するのではなく、「どのモデルの何年式か」を正確に把握することが重要です。
Z550FXの希少性を示す生産台数

Z550FXの価値を語る上で、その希少性は欠かせない要素です。
Z550FXは、Z400FXの兄貴分として鳴り物入りで登場したものの、日本国内での販売期間は比較的短く、生産台数も限られていました。
当時、日本の大型バイク市場は750ccクラスが主流であり、中型免許で乗れる400ccと、限定解除が必要な750ccとの間に位置する550ccという排気量は、やや中途半端な存在と見なされる側面もありました。
このため、爆発的なヒットモデルとなったZ400FXに比べると、Z550FXの販売台数は伸び悩んだと言われています。
正確な生産台数に関する公式なデータは残っていませんが、市場での流通量や現存する個体数から見ても、その数が非常に少なかったことは明らかです。
この生産台数の少なさが、現代におけるZ550FXの希少価値を著しく高めている最大の要因です。
中古市場でZ550FX(特に国内物)の価格が高騰しているのは、単に旧車としての人気だけでなく、手に入れたくても手に入れられないという絶対的な個体数の少なさが背景にあります。
この希少性が、Z550FXを特別な一台にしています。
KZ550とZ550FXの違いをスペックや評価で見る

- Z550FXの馬力と速さ、何速か
- Z550FXはなぜ不人気と言われるのか?
- Z550FXが不人気とされるもう一つの理由
- KZ550の中古市場での立ち位置
- まとめ:KZ550とZ550FXの違いを理解する
Z550FXの馬力と速さ、何速か

Z550FXのスペック、特に馬力や速さは、そのパフォーマンスを評価する上で重要な指標となります。
Z550FXに搭載されているエンジンは、空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒で、排気量は553ccです。
このエンジンは、ベースとなったZ500のものをボアアップしたものです。
Z550FXの最高出力については、資料によって若干の差異は見られますが、おおよそ54馬力から59馬力程度とされています。
これは、当時の同クラスのバイクとしては標準的ながらも、十分なパワーでした。
特に、弟分であるZ400FXが43馬力であったことを考えると、排気量アップによるパワーの余裕は明らかです。
トランスミッションは常時噛合式6速リターン式を採用しており、高速巡航からワインディングまで、エンジンのパワーを有効に活用できるギア比が設定されていました。
これにより、Z550FXの速さは、実際の走行シーンにおいてスペック以上の力強さを感じさせるものでした。
400ccクラスにはないトルクフルな加速と、高回転までスムーズに吹け上がるエンジンフィールは、多くのライダーを魅了した点です。
当時の雑誌のテストなどでは、0-400m加速で13秒台を記録しており、これは750ccクラスに迫る俊足ぶりでした。
Z550FXはなぜ不人気と言われるのか?

Z550FXについて調べると、時折「不人気」という評価を目にすることがあります。
しかし、これは単純に人気がなかったと解釈するべきではありません。
この評価が生まれる背景には、主に二つの理由が考えられます。
一つ目の理由は、絶大な人気を誇った弟分、Z400FXの存在です。
Z400FXは、当時の中型免許で乗れる4気筒モデルとして社会現象ともいえるほどのブームを巻き起こしました。
その強烈な人気の影に隠れる形で、Z550FXは「Z400FXの兄貴分」という認識はされつつも、Z400FXほどには市場の主役になれませんでした。
人気がなかったのではなく、比較対象が偉大すぎた、と考えるのが実情に近いでしょう。
二つ目の理由は、前述の通り、550ccという排気量の立ち位置です。
当時の日本では「中免なら400cc、限定解除すれば750cc」という価値観が根強く、その中間に位置する550ccは、どちらの層からも選択されにくいという側面がありました。
限定解除してまで乗るなら、よりパワフルでステータス性の高い750ccを選ぶライダーが多かったのです。
これらの理由から、販売台数が伸び悩み、結果として「不人気だった」というイメージが後付けで語られるようになったと考えられます。

Z550FXが不人気とされるもう一つの理由

Z550FXが不人気と評されるもう一つの側面として、カスタムパーツや情報の少なさが挙げられます。
これは、販売台数が少なかったことの副次的な影響と言えます。
Z400FXは、その圧倒的な人気と販売台数を背景に、当時から現在に至るまで非常に豊富なカスタムパーツが市場に流通しています。
エンジンのチューニングパーツから外装パーツまで、オーナーは自分の好みに合わせて様々なカスタムを楽しむことができます。
また、それに伴い整備やカスタムに関する情報交換も活発に行われてきました。
一方で、Z550FXは販売台数が少なかったため、専用のカスタムパーツがZ400FXほど多くは開発されませんでした。
もちろん、Z400FXと共通で使えるパーツも多数ありますが、エンジン内部の部品など、専用品が必要となるケースでは、パーツの入手に苦労することがあります。
このような、カスタムの選択肢や維持に関する情報の少なさが、特にこれから旧車に乗り始めようとする層にとってはハードルとなり、「扱いにくい」「手を出しにくい」といったイメージにつながり、結果として「不人気」という評価の一因となっている可能性があります。
しかし、裏を返せば、ノーマルに近い状態で維持されている個体が多いとも言え、オリジナルのスタイルを好むライダーにとっては魅力的な点でもあります。
KZ550の中古市場での立ち位置

Z550FXが国内市場で独自の立ち位置を築いている一方、兄弟車であるKZ550は、中古市場においてまた異なる評価と立ち位置を確立しています。
KZ550は、主に北米や欧州で販売された輸出モデルの総称であり、そのバリエーションは多岐にわたります。
中古市場におけるKZ550の最大の魅力は、Z550FXに比べて比較的安価で手に入れやすい点です。
特に、後輪がドラムブレーキのモデルや、外装のコンディションがそれなりの車両は、Z550FXの国内物と比較するとかなり現実的な価格で流通していることがあります。
また、KZ550シリーズには、1981年に登場した高性能版「GPz550」というスタープレイヤーが存在します。
GPz550は、エンジンがより高圧縮化され、カムシャフトもハイリフトなものに変更されるなど、ノーマルのKZ550とは一線を画すパフォーマンスを持っていました。
1982年以降のモデルではリアにモノショックサスペンションが採用されるなど、よりスポーティーな走りを追求しており、現在でも根強いファンがいます。
このように、KZ550は「Z550FXのベースモデル」として手軽に楽しむ選択肢にもなれば、「GPz550」のような高性能モデルを狙うという楽しみ方もある、懐の深いシリーズと言えるでしょう。
まとめ:KZ550とZ550FXの違いを理解する

これまで解説してきたKZ550とZ550FXの違いについて、重要なポイントを以下にまとめます。
これらの情報を整理することで、両モデルへの理解がより一層深まるはずです。
- Z550FXは主に日本国内市場向けのモデル名
- KZ550は主に北米市場向けの輸出モデル名
- 「FX」というネーミングは日本国内でのみ使用された
- 国内仕様のZ550FXはトリプルディスクブレーキが標準
- 北米仕様のKZ550はリアがドラムブレーキの仕様が多い
- 見分けるにはフレーム番号の確認が最も確実
- 国内物のフレーム番号は「KZ550B-」で始まる
- 輸出仕様のフレーム番号は「JKAKZ」等で始まることが多い
- Z550FXはZ400FXの兄貴分として1981年頃に登場
- Z550FXは生産台数が少なく希少価値が非常に高い
- 馬力は約54~59馬力でミッションは6速
- Z400FXの絶大な人気の影に隠れがちだった
- 550ccという排気量が当時の日本では中途半端と見なされた
- 専用カスタムパーツがZ400FXに比べて少ない
- KZ550はZ550FXより安価な中古車が見つかりやすい
- 高性能版のGPz550もKZ550シリーズに含まれる
- 購入時はモデルごとの仕様の違いを理解することが鍵となる
関連リンク
